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【在留資格】Vtuberの在留資格についての一考察

「Vtuber」という言葉は、元来“バーチャルYouTuber“の略で、「キズナアイ」さんが活動を始めてから一般に知られるようになり、現在では個人で活動している方から、企業・事務所に所属している方まで、幅広く見られるようになりました。

これは、動画配信用のアプリや、アバターを作成するアプリなどが低価格・無料で利用できるようになり、参入のハードルが下がっていることに加え、コロナウイルス感染症の影響による巣篭もり、大人気Vtuberの台頭により、一気に広まったのではないかと考えられます。

今や、ゲーム実況や雑談配信を行うVtuberの方だけでなく、資格者、研究者などが専門的な知識に基づいて情報発信を行う「学術系Vtuber」と呼ばれるVtuberの存在も珍しくなくなっており、Vtuberの裾野は広がりつつあります。

当事務所でも、広報担当として「栗原ぽんず」を採用し、Twitter、YoutubeといったSNSだけでなく、メタバース上でも活動範囲を広げています。

さて、こうしたVtuberは日本人だけでなく、外国人Vtuber(今回は記事の特性上、あえて“中の人“あるいは“配信者“に触れます)も少なくない状況です。

そこで今回は、“Vtuberの在留資格“にフォーカスして、外国人の方が日本でVtuber活動を行うには、どのような在留資格を取得するべきかについて考察したいと思います。

なお、今回の考察は、当事務所としての前例がない中での法律論・一般論を前提とした考察となります。

ケースによっては、異なる判断になる可能性も充分にあることや、許可を取れるかは個別具体的な事案によって変わるので、

Vtuber活動をする際や、入国の際には、行政書士等の法律専門家や入管庁によくご相談ください。

また、この記事では、Vtuberの活動の内容として、動画撮影とライブ配信を主に想定しており、キャラクターのイラストの創作や2D・3Dのモデリングをする業務については別の考察が必要になるため、今回は省かせていただきます。

今回の記事を簡略化して解説した動画も配信しておりますので、

よろしければそちらの動画もご覧ください。


さて、入管法で定める在留資格は、2022年9月現在、29種類あります。

https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html

この29種類ある在留資格から、どの在留資格を選ぶのが良いかについて、

ざっくりと次の基準でまとめてみました。

  • 1.Vtuberとして活動した対価を得る場合で、企業勢(企業・事務所に所属する)Vtuberか個人勢(企業勢以外で個人で活動する)Vtuberか。
  • 2.Vtuberとして活動した対価を得ないない場合で、日本にいる期間が90日を超えるか。

以上の2点です。


1.Vtuberとして活動した対価を得る場合

(1)企業勢Vtuber

企業勢Vtuberで、動画撮影やライブ配信などを行って、事務所から給料や報酬が出るケースです。

このケースでは、「興行」という在留資格を検討するのが通常かと思います。

「興行」は、海外のミュージシャンが日本でライブコンサートを行ったり、

プロスポーツ選手が大会に参加したり、

海外の俳優が日本で映画撮影を行うといった、

不特定多数の人に観覧・鑑賞してもらって収入を得る活動や、その他の芸能活動を想定した在留資格です。

企業勢Vtuberの場合も、撮影をして配信することが中心となる、「芸能活動」によって収入を得るものと考えられますので、

まずはこの興行の在留資格が取れないかを検討するのが良いでしょう。

そしてこの場合、芸能活動としての「興行」では、興行の活動の対価が一定程度あることが必要になることがあります。

具体的には、日本人が従事する場合と同等以上の報酬があることです。

例えば、日本人Vtuberと変わらない報酬や、それ以上の報酬が入る方です。


(2)個人勢Vtuber

次に、Vtuber事務所に所属しない、いわゆる個人勢Vtuberで、広告収入などがあるケースです。

このケースでも「興行」にあたるのではないかと思われるかもしれません。

ここは難しいところですが、入管法別表1の2では、「興行」の在留資格について、

「経営・管理・・・・・・を除く」という文言があり、この「経営・管理」の活動にあたる場合は、

「興行」の在留資格が認められないことになっています。

よって、個人が“興行主“として活動をする場合は、

経営活動にあたるとして、「経営・管理」の在留資格を取る必要があります。

この場合、「経営・管理」の在留資格が取れるかを検討することになりますが、

「経営・管理」の在留資格は、500万円以上の資本金・出資金を準備したり、

住居と分かれている事務所が求められるといった、一定の経営規模が求められ、

また、

Vtuberとして安定的な広告収入やグッズ販売の売上などで、利益を出すことが見込めるかどうかも重要となり、

立ち上げと運営の面(また、在留資格の取得と維持の面)でもハードルが高くなります。

もっとも、Vtuberとして行うイベントなどによっては、

個人勢Vtuberが“興行主“とはいえないケースもあるかもしれません。

この場合は「興行」の在留資格となる可能性も考えられます。

結局、個人勢Vtuberの方は、

「興行」と「経営・管理」のいずれにあたるかがポイントになるでしょう。

それでは次に、Vtuberとしての収入がない場合を検討してみます。


2.対価を得ない場合

この場合、「興行」や「経営・管理」は基本的に難しくなるので、別の在留資格を検討することになります。

収入を得ない、収益化できていない状態でのVtuberの活動の場合、

90日を超える長期の滞在では「文化活動」の在留資格、

90日以下の短期間の滞在では「短期滞在」の在留資格が考えられるでしょう。

(この90日の基準はあくまでも検討材料の一つとお考えください。)


(1)「文化活動」の在留資格

「文化活動」の在留資格は、収入を得ない学術上、芸術上の活動や、

日本特有の、文化・技芸の専門的な研究、専門家の指導を受けて修得する活動のための在留資格です。

例えば、アート作品の創作活動や、

茶道を身につけるために師範の下で修行をするなどのイメージです。

Vtuberの活動が、「文化活動」での「芸術」や「文化」、「技芸」に当てはまるかはなかなか難しいところですが、

日本のアニメ文化と親和性が高いVtuberの活動も、

条件次第では当てはまるとして、この「文化活動」の在留資格が可能かもしれません。


(2)「短期滞在」の在留資格

一方で、収入も得ず、90日も日本にいないような短期間の滞在であれば、

「文化活動」ではなく、「短期滞在」の在留資格も考えられます。

観光や、家族・友人に会いに日本に来たときに、

無報酬でVtuberの収録や配信をしても、「資格外活動」に当たらず、違法になるとは考えられませんので、問題ないでしょう。

また、無報酬で趣味の範囲でのVtuber活動でしたら、

「留学」や「技術・人文知識・国際業務」といった他の在留資格で、既に日本にいるときに行っても、同じく違法とは言えないでしょう。

もっとも、収益化して広告収入やスーパーチャット(投げ銭)が入るようになったり

会社の役員になったりすると、

「文化活動」や「短期滞在」の在留資格のままでは、「資格外活動」に当たり、

不法就労となってしまうことがあります。

この判断は非常に難しくなりますので、

行政書士などの法律専門家や入管庁に、相談しましょう。


なお、ここまで解説した在留資格は、外国人の方の活動の内容に着目した在留資格です。

日本人の方と結婚した外国人の方やお子さんなどの在留資格である「日本人の配偶者等」や、

「永住者の配偶者等」、「定住者」、「永住者」といった、身分に着目した在留資格には、

就労に制限がありません。

この場合、Vtuberとして仕事をしたり収入を得ることは、在留資格上の問題はありません。

(確定申告や納税などの税務の問題は別途生じうるので、税理士さんや税務署にも相談しましょう)

以上、Vtubrの在留資格についての考察となります。


ちなみに、Vtuberではない(アバターを使用しない)一般的なYouTuberも、アバターを使用するか否かの違いしかないとすれば、同じ判断になると思われるかもしれませんが、特に「文化活動」の在留資格の取得はかなり厳しくなるように思われますので、一応違いはあると思っておいた方が賢明でしょう。

今回の記事が皆様のご参考となれば幸いです。

この記事を書いた人:加々美


【参考文献】

・出入国管理法令研究会編『注解・判例出入国管理実務六法』日本加除出版

・出入国管理法令研究会編著『第2版入管関係法大全 立法経緯・判例・実務運用2在留資格』日本加除出版

【参考出入国在留管理庁website 】

「興行」 https://www.moj.go.jp/isa/application…

「経営・管理」 https://www.moj.go.jp/isa/application…

「文化活動」 https://www.moj.go.jp/isa/application…

「短期滞在」 https://www.moj.go.jp/isa/application…

【注意事項】

※本記事の解説は一般の方向けにわかりやすく理解していただくために正確性を犠牲にしている場合があります。

※本記事の解説は作成時点での情報です。法改正等で情報が変わることがあります。

※本記事の解説は一般的な情報です。個々のケースについては必ず行政書士等の法律専門家や入管庁などにご相談ください。

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