2023年改正入管法の整理(2)-上陸拒否期間-
今回は、令和5年改正入管法に関して、入管法5条1項9号で定める上陸拒否事由の改正部分である、上陸拒否期間について説明します。
以前の記事 2023年改正入管法の整理(1) のリストのうち、
2.上陸拒否事由に関する規定の整備
7.出国命令に関する規定の整備
13.上陸拒否期間を一年とする旨の決定に関する規定の整備
に関わるものとなります。
今回の上陸拒否期間の改正部分は、特に不法就労等により退去強制される外国人と、オーバーステイ後に出国する外国人にとって、その後日本に入国できるまでの期間(上陸拒否期間)が変わることから、重要な改正となります。
※今回の改正法の施行日はまだ公表されていませんので、ご注意下さい。実際の事案でのご判断については必ず法律専門家あるいは入管庁にご相談ください。
参照:入管庁 国会提出法案(令和5年3月7日) https://www.moj.go.jp/isa/laws/bill/index.html
退去強制にかかる上陸拒否事由
これまで退去強制によって出国した外国人は、原則として退去した日から5年は日本に入国できない扱いでしたが、以下のような場合には、退去の日から1年に短縮されます。
①特定の退去強制事由(第24条各号(第4号オからヨまで及び第4号の3を除く。))のいずれかに該当して日本からの退去を強制された者であること
②自費出国許可(第52条第4項)を受け、かつ、短縮申請(第52条第5項)により上陸拒否期間を1年とする決定を受けたこと
③法務省令で定める日までに自費出国許可(第52条第4項)に基づき退去したこと
④在留資格「短期滞在」としての活動を行おうとするものでないこと
そして、②の上陸拒否期間を1年とする旨の決定における短縮申請は、過去に日本からの退去を強制されたこと又は出国命令により出国したことがない者で、その者の素行、退去強制の理由となった事実その他の事情を考慮して相当と認められる必要があります。
この決定については法務大臣に一定の裁量があると考えられます。
出国命令にかかる上陸拒否事由
在留期限を超えて滞在する(いわゆるオーバーステイ)の場合で、過去に退去強制等による出国をしたことがないことや、犯罪による懲役又は禁固に処せられたことがないといった一定の場合で、自ら入国管理官署に出頭することで、身柄を収容されずに簡易な手続で出国できる、いわゆる「出国命令」による出国の場合、出国した日から1年という短い上陸拒否期間とする扱いがこれまでもありました。自ら出頭を促すインセンティブを与える設計です。
そのうち今回の改正で、在留資格「短期滞在」の活動を行おうとする者に関して、以下のすべてを満たす場合には、上陸拒否期間を出国した日から5年とする規定が設けられ、厳しくなっています。
①在留期間を超えて滞在した場合であること
②入国警備官による違反調査が開始された後、退去強制対象者に該当するとの認定の通知を受ける前に、入国審査官又は入国警備官に対して速やかに日本から出国する意思がある旨を表明したこと
③在留資格「短期滞在」としての活動を行おうとするものであること
これにより、オーバーステイでは、入国警備官による違反調査が始まる前までに出頭しなければ、基本的に5年間は「短期滞在」での入国ができなくなることになります。
以下、当事務所で整理をした上陸拒否期間に関する条文の新旧対照表ですので、ご参照ください。
(加々美)