デジタルノマド特定活動のパブコメ所感
先日、デジタルノマドのための在留資格「特定活動」に関するパブリックコメントが公開されました。
公表された改正案についての、当職の現時点での整理と所感(※印部分)です。
改正案の条文の分解・整理はあくまでも当職の私見であり、所属する団体の見解ではありません。
なお、過去のデジタルノマドビザに関する記事として、以下をご参照ください。
パブコメ改正対象2つ
(1)特定活動告示の一部改正
(2)入管法施行規則の一部改正
改正の趣旨・目的:「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版(令和5年6月16日閣議決定)」の「国際的なリモートワーカー(いわゆる「デジタルノマド」)の呼び込みに向け、ビザ・在留資格など制度面も含めた課題についての把握・検討を行い、本年度内に制度化を行う」
(1)特定活動告示の一部改正
入管法7条1項2号に規定する法務大臣があらかじめ告示をもって定める活動(いわゆる特定活動告示、平成2年法務省告示第131号)への追加
※告示第53号とするのか?
ア 活動内容:大きく2つの類型(細かく3つの類型?)
ア 外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体との雇用契約に基づいて、本邦において情報通信技術を用いて当該団体の外国にある事業所における業務に従事する活動又は外国にある者に対し、情報通信技術を用いて役務を有償で提供し、若しくは物品等を販売等する活動(本邦に入国しなければ提供又は販売等できないものを除く。)。
⇩分解
①外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体との雇用契約に基づいて、本邦において情報通信技術を用いて当該団体の外国にある事業所における業務に従事する活動
又は
②-1 外国にある者に対し、情報通信技術を用いて役務を有償で提供する活動
若しくは
②-2 外国にある者に対し、情報通信技術を用いて物品等を販売等する活動(本邦に入国しなければ提供又は販売等できないものを除く。)
※① 雇用契約のみを対象としている?
※②-1 会社役員などの委任契約、個人事業主などの請負契約を対象としている?
※②-2 自ら作成した音楽やデータなどを販売、インターネット売買を想定?、Youtuberはここに含む?
※②-2の「物品等を販売等する活動(本邦に入国しなければ提供又は販売等できないものを除く。)」は、「情報通信技術を用いて」にかかるのか?
※②-2 最後の括弧書きは“転売ヤー“防止のためか?、本邦での観光で撮影した写真データや動画データを提供することは除外するのか?
※②-2 「物品等」の「等」とは? 「販売等」の「等」とは?
※「情報通信技術」は、電話回線やWiFiなどのインターネット回線の接続を前提とするか?
※「外国にある者に対し」という文言から、物理的に日本にいる者に対しては(外国人に限らず日本人も)役務提供や物品等を販売等する活動を認めないという解釈か?(2024/02/07追記)
該当性要件:
また、次のいずれにも該当すること。
○本邦に上陸する年の1月1日から12月31日までのいずれかの日において開始し、又は終了する12月の期間の全てにおいて、本邦での滞在期間が6か月を超えないこと
⇩分解
本邦に上陸する年の1月1日から12月31日までのいずれかの日において開始(し)する12月の期間の全て
又は
本邦に上陸する年の1月1日から12月31日までのいずれかの日において終了する12月の期間の全て
において、本邦での滞在期間が6ヶ月を超えないこと
※開始と終了を「又は」で繋いでいる理由は、12月31日を跨いだ滞在を想定しつつ、例えば12月1日に活動を開始した場合、その後12ヶ月間のカウントの開始を12月1日からとする意味か?どの日から起算しても1年間に6ヶ月を超える滞在にならないようにするイメージ?
※「在留」ではなく、「滞在」としていることから、物理的に日本にいる間の期間を通算するのか?出国後6月経過していなくても、通算6月にならないなら、すぐに同じ在留資格で入国できるのか?
※再入国許可(法26条1項)、みなし再入国許可(法26条の2第1項)の対象となるか?
※例えば更新をして1年以上の滞在は認め難いのか?
○租税条約の締約国等かつ査証免除国・地域の国籍者等であること
※なぜ査証免除国・地域に絞るのか?
※租税条約の締約国等に絞るのは租税条約等による免税等のためか?
○年収が1,000万円以上であること
※どのように年収を立証するのか?
※見込み年収でも良いのか?
※「年収」とは?個人事業主の場合は売上高で見るのか、利益で見るのか?
○本邦滞在中に死亡、負傷又は疾病に罹患した場合における保険に加入していること
※国保を除外する趣旨か?
イ 国際的なリモートワーカーの配偶者又は子として行う日常的な活動
次のいずれにも該当すること
○査証免除国・地域の国籍者等であること
※配偶者が別の国籍・地域である場合、この要件に当たらない場合がありうるのでは?
※事実婚、同性婚などは含むのか?
○本邦滞在中に死亡、負傷又は疾病に罹患した場合における保険に加入していること
(2)入管法施行規則の一部改正
出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和56年法務省令第54号)を一部改正し、上記(1)ア及び同イの活動を指定された本邦に在留する者を法第19条の3に規定する中長期在留者から除く。
⇩つまり
法19条の3に規定する中長期在留者から除く。
※本来、法19条の3第1号〜3号からすると「中長期在留者」に該当。4号の法務省令(施行規則19条の5)に追加して中長期在留者から外すことで、住基法30条の45の「住所」に当たらず、住民登録から外れる→6月以内だと生活の本拠たる「住所」とは認めず、国保法6条11号・規則1条1号の適用除外・国民年金法7条1項1号の不適用のためか?
※住民税の課税対象となるか?
その他
- 在留資格認定証明書の交付申請の対象となるはずだが(法7条の2第1項)、申請代理人が想定されているか?
- 査証事前協議に基づく在外公館での査証発給申請も認められるか?
- 在留申請オンラインシステムでの申請の対象となるか?
- eVISA等の利用による査証のオンライン申請の対象にならないのか?
- 資格外活動許可は認めうるのか?認めるとする場合どのようなケースが想定されるか?
- 中長期在留者から外れると住民票の写しや在留カードが交付されなくなると思われるが、滞在先がホテルなどの宿泊施設に事実上限定されるのでは?
- 在留状況を把握する方法は?
以上の整理と所感から、パブリックコメントへの意見を考えてみたいと思います。
(加々美)