
【技能実習】統計からみる監理団体の違反
技能実習制度に関しては、過酷な労働を強いられたり、最低賃金以下の給与しか与えられなかったりするなどして、実習生が失踪してしまうといった事件の報道が時折みられます。
最近も実習実施者における労働基準関係法令違反が70.8%あったとしてメディアに取り上げられました。こうした報道も相まって、技能実習制度そのものへの抵抗感のようなものを感じる方は少なくないかもしれません。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20618.html(厚生労働省)
今回、外国人技能実習機構(OTIT)が公表している監理団体の処分の事例・統計から、監理団体について実際にどの程度の違反があるのかを見てみました。
そもそも、監理団体は、実習監理を行うという、技能実習制度における非常に重要な責務があります。実習実施者において法令違反などがあると、最悪の場合は技能実習の認定取消しがなされ、実習ができなくなってしまいます。また、監理団体が法令違反をした場合、許可取消しや事業停止命令、あるいは改善命令などがなされ、その事実は公表されることになっています。監理事業許可取消しの処分等とその公表は、監理団体一般に対して強い牽制が期待できます。
OTITから許可取消しや改善命令などが度々公表されており、監理団体の総数からすると思ったほど多くない印象です。(一方、認定取消しは非常にインパクトがあります。)https://www.otit.go.jp/gyouseishobun/
しかし、違反の件数と行政処分の件数はイコールではないので、処分事例だけを見ても全体像はなかなか見えてきません。
そこで、行政処分とならなかった違反行為がどの程度あるのかを知る上で参考となる違反指摘内容と件数の集計が公表されていますので、こちらも見てみましょう。
https://www.otit.go.jp/files/user/toukei/211001-00.pdf(OTIT 令和2年度概要)https://www.otit.go.jp/gyoumutoukei_r2/(OTIT 令和2年度業務統計)
上記概要・業務統計見ると、令和3年3月30日現在の監理団体の総数は3,275件、令和2年度の監理団体への実地検査件数は3,363件、うち1,402件に指導を行っています。「令和2年度に実施した行政処分等の状況」では、監理団体の許可取消しが13団体、改善命令が2団体となっています。
違反行為を行った(把握された)ことで直ちに許可取消し等の処分が必ずしも行われるわけではなく、違反の重大性を加味して判断しているようです。
公表されている許可取消し・改善命令の理由の中で特に目立つのが、
- 入国後講習に関する違反
- 不適正な監査、実習監理
- 名義貸し
- 違約金などの違法な取り決め
です。
他方で、指導件数を見てみると、
- 「帳簿等の作成・備え付け、届出の提出に関するもの」:835件
- 「実習実施者の監理・指導に関するもの」:825件
- 「監理団体の運営・体制に関するもの」:700件
- 「監査報告・事業報告に関するもの」:314件
- 「技能実習生の保護・支援に関するもの」:18件
合計:2,692件となっています。
この数字からすると、監理団体の違反行為はそれなりの件数があることが見て取れます。
処分に至るような違反は少ないとはいえ、OTITによる実地検査の指導にはしっかり対応しなければなりません。特に監査については、実習実施者の違反を抑制する機能があると言えますから、監査をしっかりと行わなければ、実習実施者の違反が見過ごされ、認定取消しといった最悪の結果に結びついてしまう可能性があります。
技能実習が適正に行われ、技能実習生が安心して実習を行うために、監理団体が非常に重要な存在に位置づけられていることを、監理団体は改めて認識する必要があります。
当事務所では、技能実習制度における監理団体の外部監査人、実習実施者の顧問もお受けします。
その他、特定技能制度における登録支援機関や外国人受け入れ企業の顧問、単発でのご相談も可能です。
適正な受け入れをしたいが、制度や法令、手続きが難しすぎてお困りの方は、お気軽にお問い合わせ下さい。
(加々美)