【入管】在留資格「研修」の解説
「海外の関連会社から、日本の現場にスタッフを呼んで研修をさせたいが、ビザはどうしたらよいか」といったご相談のケースでは、いくつかある在留資格のうち、「研修」の在留資格が選択肢のひとつとして挙げられます。
しかし、「研修」の在留資格は単に「研修をさせるから」という理由では認められず、適切な研修計画を立てたうえでの在留資格の取得に加え、不法就労とならないために注意すべき点があります。
今回は、在留資格「研修」の基本的な内容について解説します。
なお、今回の記事は、2026年7月2日時点の情報をもとにお伝えしております。申請の際には必ず入管庁等から最新の情報を取得してください。
1. 在留資格「研修」の本来の目的とは
在留資格「研修」は、開発途上国等の青壮年を日本の公私の機関(企業など)に受け入れ、技能や技術、知識を修得してもらうための制度です。 研修生が帰国後にその技能を母国で活かし、国等の発展に寄与する「人づくり」に貢献することを目的としています。
2. 「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」の内容
在留資格「研修」では、大きく分けて2つの入管法上の要件を満たすことが必要です。(在留資格の変更・更新を伴う申請では、それまでの在留状況なども考慮した法務大臣の一定の裁量が伴った審査が行われます。)
① 在留資格該当性
まずは、本邦(日本)で行う活動が「本邦の公私の機関により受け入れられて行う技能等の修得をする活動」に合致しているかどうかが問われます。
この「研修」の在留資格は、就労できない「非就労資格」です。雇用契約を締結して就労する(働いて報酬を得る)ことは、そもそもこの「研修」の枠組みからは外れてしまうため、申請は不交付・不許可となり、この在留資格で就労活動をした場合には不法就労(資格外活動)となります。
つまり、この在留資格で認められる活動は、就労にあたらない範囲での研修(技能、技術又は知識を学ぶ)活動となります。国内のみならず、海外の企業からの支払いであっても「報酬」を支払うことは認められません。
仮に「報酬」を与える研修の必要がある場合は、「技能実習」(あるいは「育成就労」)、「企業内転勤」などの在留資格での受け入れが考えられます。
なお、実費弁償としての「研修手当」(例えば渡航費などの実費、参考書、日用品の購入などの小遣い程度のもの)については「報酬」から除かれますが、名目はどうあれ、実態として役務の給付に対する対価とされるものは「報酬」といえますので、注意が必要です。
② 上陸許可基準適合性
上記の在留資格該当性が認められるとして、さらに細かな基準(いわゆる「上陸許可基準」)に適合する必要があります。
例えば、同じ作業の反復だけで修得できるような単純作業ではないこと、母国では修得が困難な技術等であること、修得する技能について5年以上の経験を持つ常勤職員が指導することなど、研修内容のみならず、受け入れ企業側の体制も求められます。
具体的には、以下の①~⑧の基準が法令上定められています。(読みやすくするために筆者の判断で一部表現を変えています。)
①申請人が修得しようとする技能、技術又は知識(技能等)が同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと
②申請人が18歳以上であり、かつ、国籍又は住所を有する国に帰国後日本において修得した技能等を要する業務に従事することが予定されていること
③申請人が住所を有する地域において修得することが不可能又は困難である技能等を修得しようとすること
④申請人が受けようとする研修が研修生を受け入れる日本の公私の機関の常勤の職員で修得する技能等について5年以上の経験を有するものの指導の下に行われること
⑤申請人が日本において受けようとする研修の中に実務研修(※)が含まれている場合は、次のいずれかに該当していること
イ 申請人が、日本の国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が自ら実施する研修を受ける場合
ロ 申請人が独立行政法人国際観光振興機構(JNTO)の事業として行われる研修を受ける場合
ハ 申請人が独立行政法人国際協力機構(JICA)の事業として行われる研修を受ける場合
ニ 申請人が独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構石油開発技術センターの事業として行われる研修を受ける場合
ホ 申請人が国際機関の事業として行われる研修を受ける場合
へ イからニに掲げるもののほか、申請人が日本の国、地方公共団体又は日本の法律により直接に設立された法人若しくは日本の特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人若しくは独立行政法人の資金により主として運営される事業として行われる研修を受ける場合で受入れ機関が次の(1)~(5)のいずれにも該当するとき
(1)研修生用の宿泊施設を確保してること(申請人が受けようとする研修の実施についてあっせんを行う機関が宿泊施設を確保していることを含む。)
(2)研修生用の研修施設を確保していること
(3)申請人の生活の指導を担当する職員を置いていること
(4)申請人が研修中に死亡し、負傷し、又は疾病に罹患した場合における保険(労働者災害補償保険を除く。)への加入その他の保障措置を講じていること(あっせん機関が当該保障措置を講じていることを含む。)
(5)研修施設について労働安全衛生法の規定する安全衛生上必要な措置に準じた措置を講じていること
ト 申請人が外国の国若しくは地方公共団体又はこれらに準ずる機関の常勤の職員である場合で受入れ機関がへの(1)から(5)までのいずれにも該当するとき
チ 申請人が外国の国又は地方公共団体の指名に基づき、日本の国の援助及び指導を受けて行う研修を受ける場合で次の(1)~(2)のいずれにも該当するとき
(1)申請人が外国の住所を有する地域において技能等を広く普及する業務に従事していること
(2)受入れ機関がへの(1)から(5)のいずれにも該当すること
⑥ 受入れ機関又はあっせん機関が研修生の帰国旅費の確保その他の帰国担保措置を講じていること
⑦ 受入れ機関が研修の実施状況に係る文書を作成し、研修を実施する事業所に備え付け、当該研修の終了の日から1年以上保存することとされていること
⑧ 申請人が日本において受けようとする研修の中に実務研修が含まれている場合は、当該実務研修を受ける時間(2以上の受入れ機関が申請人に対して実務研修を実施する場合にあっては、これらの機関が実施する実務研修を受ける時間をを合計した時間)が、日本において研修を受ける時間全体の3分の2以下であること。ただし、申請人が、次のいずれかに該当し、かつ、実務研修の時間が日本において研修を受ける時間全体の4分の3以下であるとき又は次のいずれにも該当し、かつ、実務研修の時間が日本において研修を受ける時間全体の5分の4以下であるときは、この限りでない。
イ 申請人が、日本において当該申請に係る実務研修を4か月以上行うことが予定されている場合
ロ 申請人が、過去6か月以内に外国の公的機関又は教育機関が申請人の日本において受けようとする研修に資する目的で日本の外において実施した当該研修と直接に関係のある研修(実務研修を除く。)で、1か月以上の期間を有し、かつ、160時間以上の課程を有するもの(受入れ機関においてその内容が日本における研修と同等以上であることを確認したものに限る。)を受けた場合
4. 民間企業単独の受け入れでは「実務研修」はさせられない
上記、上陸許可基準の⑤、⑧で「実務研修」という言葉が出てきました。
研修には、大きく分けて「実務研修」と「非実務研修」があり、⑤の基準にあるような公的機関が関与しない受け入れの場合、「実務研修」を行うことは認められていません。
実務研修とは、商品の生産若しくは販売をする業務又は対価を得て役務の提供を行う業務に従事することにより技能等を習得する研修で、商品の生産をする業務に係るものにあっては、生産機器の操作に係る実習のことです。
例えば、一般の職員と同様に生産ラインに参加し、商品を生産することを通じて技能等を習得する場合(いわゆるOJT)などがあたります。
一方、商品を生産する場所とあらかじめ区分された場所又は商品を生産する時間とあらかじめ区分された時間において行われるもの(つまり研修の場所や時間が生産工程から独立しているような場合)は、非実務研修となります。
詳細については、入管庁「パッケージ型インフラの海外展開に係る在留資格「研修」における「非実務研修」の範囲の明確化について」をご参照ください。
3. 「技能実習」や新制度「育成就労」との違い
「技術を学ぶ」という意味では「技能実習」とよく似ていますが、決定的な違いがあります。
「技能実習」:企業と雇用契約を結び、「労働者」として働きながら実務を通じて技術を学びます。日本の労働関係法令が適用されます。
「研修」:雇用契約は結びません。労働者ではなく、あくまで「研修生」という立場です。日本の労働関係法令は適用されないと考えられます。ただし、事案によっては労働者性が認められる場合があります。(三和サービス事件・名古屋高判平成22年3月25日 労判1003号5頁〔28161830〕)
なお、2027年4月1日から、技能実習制度に代わり、新たな制度として「育成就労」がスタートする予定ですが、こちらも雇用契約を結ぶ労働者として就労を行い、報酬が支払われるという点で、「研修」とは異なります。
4. 「企業内転勤2号」を見据えて
海外にある事業所から日本にある事業所への転勤を伴った就労活動の場合、「企業内転勤」も検討に値します。
特に、2027年4月1日から、育成就労産業分野以外の分野の業務にも従事可能な幅広い業務が可能となる「企業内転勤2号」(現行の「企業内転勤」は1号とされます)という新制度のスタートも予定されています。
今後具体的な基準が公表される予定ですので、入管庁からの続報をお待ください。
5. おわりに
在留資格「研修」は、「実務研修」が一定の場合に限られていることや、「報酬」の支払いが認められないという点で、特に民間企業での検討・活用は慎重に行う必要があります。
制度の趣旨を正しく理解し、コンプライアンスを遵守した研修計画を立てることが不可欠です。
「自社の計画は「研修」に該当するのか?」「企業内転勤など別のビザの方が適切ではないか?」と少しでも迷われた際は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。
【参考】
入管庁「在留資格「研修」」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/trainee.html
外務省「就労や長期滞在を目的とする場合 一般査証:研修」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/chouki/visa8.html
入管庁「育成就労制度」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html
入管庁「外国人技能実習制度」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/titp/nyuukokukanri05_00014.html
入管庁「在留資格「企業内転勤」」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/intracompanytransfee.html
(加々美)