最近では,クラウドと呼ばれるインターネット上のサービスが盛んになり,ネットがつながっている環境ならどこでもクラウドにアップロードしたファイルを引き出し,仕事をすることができるようになりました。
以前まではUSBメモリ,CDなどの媒体が主流でしたが,紛失・盗難の危険性があり,時折重要なデータが入ったUSBメモリを紛失したなどといった話を聞くことがありました。
しかし,クラウドなら「紛失・盗難」というリスクはない(PCなどの媒体そのものは有り得ますが)ので,その面で言えば安全です。
一方,クラウドは必ずどこかにデータを集約するサーバーが置かれているはずで,その運用形態はいろいろありますが,絶対に大丈夫というわけではありません。
クラウド事業者がサーバーのデータを誤って消去してしまった事件や,大量のアカウント情報が抜き取られる事件など,クラウドに対する不信を招くような事件が時折見受けられます。
利用規約は契約によって縛りを掛けるため,一定の効力はあるものの,それだけでは物理的な損壊,テロ,災害などから守られるわけではありません。
もっとも,それらをもって「クラウドは危険」と判断して利用しないというのは極論です。
大切なのは,自らが保有する情報がどれほどの重要性をもっているか,それをそのクラウドに載せることは適切か,事故があった場合に想定される損害はどの程度か,といった具体的なリスク分析と対策を取ることでしょう。
私の事務所では,クラウドの利用について一定のルールを定めて運用しています。
例えば,重要な個人情報にかかるデータについては,クラウドにアップロードしないことや,パスワードロックする,バックアップをとる,などです。
情報の扱いに神経質になるのは,行政書士法第12条で,
行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。
と規定されていることも要因です。
これは,行政書士は依頼者から個人情報をはじめとした重要な情報を取り扱うため,専門家として重い責任を負わせた規定です。
時折,「守秘義務に反しているのでは?」「守秘義務に反していなくても,これを依頼者が見たらどう思うのだろう?」と疑問を持たざるをえないような同業者のネット記事を見かけることがあり,また,それを見て自分自身,襟を正さなければという意識に駆られます。
クラウドに限らず,今後,行政書士をはじめとした士業は,電子化の波の中でどのように対応するか,そして,どのように業務に繋げるか,といった課題にますます向き合わざるを得なくなるでしょう。